この記事のまとめ:
こども達3000人に「国・政策に求めていること」を調査。
「子どものための新たな省庁・法律に期待する子ども」は46.1%、期待しないと回答をした32.6%の子どもたちも、「現状が改善する・子どもの声が聴かれるようになるのか?」という心配・不安からの回答。
約6割の子どもが国や自治体・議員と話す機会がないと感じている。 子どもたちは意見を持っているが伝え方や「伝えて良いのか」がわからない。
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1月20日、第29回目の「Children Firstのこども行政のあり方勉強会〜こども庁の創設に向けて〜」を開催しました。今回は公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの西崎さんから、子どもへのアンケート調査の結果とそこから見える「子どもたちが国・政策に求めていること」をご発表いただきました。
写真)公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン西崎さん
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは約100年の歴史を持つ子ども支援専門の国際NGOで、日本では子どもの貧困問題の解決や虐待予防、災害時の緊急支援活動、そして新型コロナウイルス対応緊急子ども支援などの活動をしています。
今回のアンケートでは、18歳までの子ども達2,984人が答えてくれました。
資料: 3,000人の子どもの声〜国の子どものための新たな取り組みに関する 子どもアンケート調査結果から〜
調査結果のハイライトを3つに分けてご紹介します。
■子どもの困りごとについて
「自分の身近なことで困っていること、心配なことはなんですか?」と問いに対して、進学や受験・就職が約4割、お金・勉強のことがそれぞれ約3割でした。
資料: 3,000人の子どもの声〜国の子どものための新たな取り組みに関する 子どもアンケート調査結果から〜
また、上記資料のうち「いじめ」や「虐待」に関することでは、具体的に困っていることを挙げてくれた子どももいました。
深刻ないじめを受けている状況を書いてくれていたり、困っていることを先生や保護者に報告・相談しても逆に非難されてしまい助けてもらえないという状況があったことがわかります。
虐待に関することでも子どもたちからの悲痛な訴えが寄せられています。
資料: 3,000人の子どもの声〜国の子どものための新たな取り組みに関する 子どもアンケート調査結果から〜
また経済的なことについての困りごとについても具体的な声が寄せられています。
保護者が健康的ではない状態であることにより金銭的な心配があり、自身の進学のことを考えられないという声や、ヤングケアラーとなっている子どもからの声も寄せられました。
資料: 3,000人の子どもの声〜国の子どものための新たな取り組みに関する 子どもアンケート調査結果から〜
そのほか、校則・学校のことや新型コロナウイルス感染症について困っていることについても具体的な声が寄せられています。
資料: 3,000人の子どもの声〜国の子どものための新たな取り組みに関する 子どもアンケート調査結果から〜
こうした困りごとのうち、「いじめ」を選択した子どもは全体のわずか1.9%でした。しかし、「いじめ」以外の困りごとを選択した子どもの自由回答において、明らかにいじめに関連する記述が57件(1.9%)あり、合計で3.8%の子どもがいじめに関連する悩みを抱えていることがわかりました。
なぜ「いじめ」を選択しなかったのか?ということについては、「いじめられていると認めたくない」、「いじめだと認識していない」という2つの要因があると考えられます。たとえ匿名だとしても、子どもに直接にいじめなどの状況を確認したり、子どもたちの本当の困りごとを補足することの難しさを強く感じました。
■子どものための新たな省庁・法律への期待
子どものための新たな省庁・法律に期待する子どもは46.1%でした。
期待しないと回答をした32.6%の子どもたちも、「現状が改善する・子どもの声が聴かれるようになるのか?」という心配・不安からの回答でした。
また、「変わる前に大人になってしまうと思うから(期待していない)」という意見に衝撃を受けました。子どもたちの期待に応えるためにも、まさに今、こども庁や子どもに関する基本法の整備を進めていく必要があります。
資料: 3,000人の子どもの声〜国の子どものための新たな取り組みに関する 子どもアンケート調査結果から〜
■大人は考えや意見を聴いているか
約6割の子どもが国や自治体・議員と話す機会がないと感じていることがわかりました。
また自分の意見を言わない・言いにくいと回答した子どもたちに理由を聞くと「言う機会がない・言っても変わらない」と回答した子どもが5割弱いました。しかし上位6つの意見からも、“子どもたちは意見を持っているが伝え方や「伝えて良いのか」がわからない”と感じていることがわかりました。大人側の聴く姿勢・配慮・言い出しやすい工夫が必要不可欠であると思います。
匿名・アンケートであれば回答したいという子どもは約3割いました。
資料: 3,000人の子どもの声〜国の子どものための新たな取り組みに関する 子どもアンケート調査結果から〜
これらのアンケート結果から、子どもたちを取り巻く問題は多岐に渡ること、また深刻な状況に置かれている子どもたちが多くいることがわかりました。また、「言ってもどうせ変わらないじゃん」という意見が実際にアンケートでも見られました。
西崎さんからは「意見を言うということだけでもハードルが高いことです。さらに意見を言ったことで自分の周り・社会が変わってくれたという体験がとても重要だと思います。子どもの意見を聴くだけではなく、それを基に社会がどんなふうに変わっていくのかというところまでをセットで考えていただきたい。」という強い要望がありました。
また最後に、社会全体で「子ども中心の社会づくりが大切だよね」という流れを高めてきたことについて、この勉強会での議論の意義についても触れていただきました。この機会に、期待してくれている子どもたちのために、また期待できないと考えている子どもたちに「頑張ったらできたよ!」と伝えることができるようにしなければなりません。
また今回のアンケート結果を伺い、想定外であったことは、子どもたちが親のことをかなり心配していることでした。親のことを心配して言えない、できないと感じている悲痛な思いを受け止め、早急に何ができるのかを考えていきます。
また教員の行き過ぎた指導やいじめの助長についても、「先生が助けてくれない」という意見が見られることもリアルな結果であると感じました。こうしたリアルなアンケートは考え方によっては保護者や教員など身の回りの大人が「頼りにならない」という距離感・不信感が見られることから、調査の難しさも感じるところでありました。
30回近く続けてきた勉強会ですが、子どもの視点に立つと全く違う世界があるのだなということを実感しています。やはり子どもの意見も大切にしながら子どものための施策を進めてまいります。
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