第6回目の「Children Firstの子ども行政のあり方勉強会〜こども庁創設に向けて〜」にお越しいただいた、NPO法人フローレンス前田晃平さんの「子どもたちを性犯罪から守る”日本版D B S”実現への課題について」のお話について紹介したいと思います。
写真)NPO法人フローレンス前田晃平さん
前田さんからは、性犯罪の切り口からみた、日本における保育・教育現場の課題について説明をいただきました。現状日本の法律・制度では、教育現場で児童に対するわいせつ行為で懲戒免除になったとしても、保育の現場でなら働くことが可能です。なぜならば、教育は文部科学省の管轄であり、保育は厚生労働省の管轄のため、規制が存在しないからです。
加えて、教員がわいせつ行為で逮捕されても、3年で復職ができます。なお、保育士の場合は2年で復職が可能です。このように、縦割り行政や現状の法制度では、保育・教育現場の性犯罪抑止が出来ておらず、課題となっています。
図)前田さん提供資料
性犯罪の中でも、こと小児わいせつは喫緊の課題として取り組まなければいけません。なぜならば、小児わいせつの特徴として、他の性犯罪と比較した時に高い再犯率と常習性が挙げられからです。法務省の調査によると、再犯率(5年以内)は9.5%と最も高くなっており、極めて高い常習性が指摘されています。また、下図の通り性犯罪前科2回以上の者について性犯罪小児わいせつは84.6%と、他の性犯罪と比較して高い数値になっています。
図)前田さん提供資料
そして、小児わいせつを防止する取り組みとしてイギリスではDBS(Disclosure and Barring Service)を導入しています。DBS とは、英国司法省管轄の犯罪証明管理および発行システムのことです。子どもに関わる職種(定義:18歳未満の子どもに1日2時間以上接するサービス)で働くことを希望する人は、DBSから発行される犯罪証明書が必要です。これはボランティアであっても同様に必要なものとなっています。そして、この犯罪証明書を教育水準局(Ofsted/office for Standards in Education)に提出することで、初めて就労が可能になります。このDBSはイギリスだけでなく、ドイツ・フランス・ニュージランド・スウェーデン・フィンランドなどでも同じ取り組みがされています。
図)前田さん提供資料
英国のDBSによると2017年時点で、子ども及び高齢者や障害者などに接する業務への就業不適切者は6万4千人います。DBSはイングランドとウェールズが対象であり、同じ割合だけ日本に就業不適切者がいると仮定すると、約12万8千人という試算になります。しかし、日本では行政機関個人情報保護法によりDBSを導入することが不可能です。
又、仮にD B Sを導入したとしても、「行政の縦割り」により、事業者を管理・監督することが出来ません。よって、日本でD B Sを実現するためには犯罪歴証明書を提出させる法的根拠と、Ofstedのように事業者を管理・監督する主体が必要となります。
では、我が国の取り組みの現状を見てみると、昨年末に厚生労働省は、児童にわいせつ行為をしたベビーシッター事業者をデータベース化する方針を発表しました。また、文部科学省では、わいせつ教員が復職できる期間をデータベースに40年掲載する運用を開始しました。
写真)左:風間暁さん、右:前田晃平さん
しかしこれは、教育機関の雇用者は教員を雇う前にこのデータベースを確認するように「通達」されているだけで、義務にはなっていません。このように、所管の府省庁ごとに対策をうっていては、DBS実現に立ちはだかる壁は突破できません。子どもの権利を守るためには「行政の縦割り」を打破し、包括的な立法が必要不可欠だと提言をいただきました。
図)前田さん提供資料
性犯罪は「魂の殺人」とも呼ばれています。幼少期に身近な信頼できる人に裏切られた経験は、その後の人生に大きなトラウマを残します。前田さんのご説明の中にもあったように、DBS制度の実現には立法が必要不可欠であり、それをやれるのは政治しかありません。
引き続き、政府与党議員として子どもを守るため、子ども庁の創設に尽力して参ります。
写真)閉会の挨拶をする山田太郎
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